神明ヶ谷須恵器窯跡
日本六古窯 越前焼のふるさと 小曽原 深ぼり旅
ドングリの豊富な原生林説
どんぐり
昭和62年発行の『宮崎村誌』に“小曽原は大柞原(おおそ はら)つまり、くぬぎ、ならの木の原生林帯”という一節がある。「柞」は音読みで「さく」、訓読みでは「ははき」と読み、 コナラ属の総称を意味する。コナラ属はドングリを実らせる落葉広葉樹で、焼き物の窯を焚く際には薪になり、また、その灰は「柞灰」(すばい)と言い、焼き物の釉に使用される。

※釉・・・陶磁器の表面に付着したガ ラス層。独特の風合いを生み出す

「小」の字で年貢を少なく
米俵
前出の説に関連して、「大」が「小」になった由縁のこんな説もある。年貢徴収のための検地の際に、小さな雑木林に過ぎず田に適さないことをアピールするために「小」の字をあてたというもの。役人に「この谷の先は水利の悪い雑木林ばかりでして...」という村人の声が聞こえてきそうである。
トチノキの「橡」か...
トチノキ
トチノキの漢字は「栃の木」が一般的だが、「橡」もトチノキを意味し、音読みでは「ぞう」「しょう」と発音する。このことから、「橡」(ぞう)の木がたくさんある雑木林の「ぞうはら」が呼称になったと考えることもできる。ちなみにトチノキもコナラ同様にドングリを実らせ、その実はトチ餅の材料になる。トチノキやコナラは、いずれも湿気を好み肥沃な土壌で育つことから、山に囲まれた小盆地の小曽原がそうしたドングリを実らせる木々の原生林であったことはうなづける。
隣村の曽原からの分地説
山間の集落
小曽原の南側は、低い山を隔てて越前市曽原町と隣接している。
このことから越前市曽原町より分かれた集落であったことが「小」の文字から推察されるという。
穀物を蒸す土器由来説
土器
ほかにも、小曽原ならではの古くからの生業を思わせるこんな説も。小曽原の「曽」は旧字体で「甑」と書く。「甑」は米などを蒸すための甑(こしき)という古代の土器を意味する。古代の窯跡が数多く残る地だけに、 甑の文字を含む地名に着目し たこの説も、あながち否定は できない。ではそんな古代にまでさかのぼる小曽原の焼き物の歴史をみていこう。